きまぶろ

本とアニメと気ままな生活のブログ

踊る星座(青山七恵)

「いくら汚れた雪だるまの立場に甘んじようと、通る泥道だけは自分で選びたい」

 

 青山七恵の作品もそうだが、芥川賞作家の作品はエンタメとは一線を画しているものも多いように感じる。だが、「踊る星座」はめずらしくエンタメ寄りになっている。

 目次からは13の章立てになっているのがわかり、最初の2つほど読むと、短編集なのかと思った。だが、短編集にしては1つが20ページほどで、短すぎる。連作なのかもしれないと思い読み進めると、長編であることがわかる。しかも、どの章にも不気味な描写があり、不条理も感じる。現実とは一部だけ設定の異なる夢を見ているような気になってくる。主人公も不安だろうが、読んでいる方も不安になってくる。ラス前にはそれが加速し、身動きがとれなくなり、主人公でなくてもすべてを投げ出して逃げ出したくなる。そして、予想外の展開が。

 ビッグファイブが出てきたり、これは自虐史観が展開されるかとはらはらしたが、かすった程度で済んでいた。

 青山七恵の作品は小説としても面白いが、たとえを使った表現などが素晴らしいのも参考になる。