きまぶろ

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絵でわかる生物多様性(鷲谷いづみ)

 生物多様性(viodiversity)とは、種内多様性、種間多様性、生態系多様性の3つで、自然環境保全のためのキャッチフレーズである。分類され学名の付けられている種は約200万種いるが、推定ではその10倍程度は存在している。全生物の共通祖先LUCA(last universal common ancestor)がそのすべての生物へと進化した。特に小さな生物は未発見の種が多い。しかも発見するよりも絶滅していくスピードの方が早い。

 生態系の多様度を数値化するものとしてシンプソンの多様度指数D=1-Σ(pi)^2があるが、保全上は有効ではない。

 生物群集内での種間の関係は食物連鎖、競争、共生の3つがある。

 農地が増えすぎ、自然林やサンゴのの減少で、生息、生育場所のモザイク性が減少し、多様性が失われている。

 生態系の大切さは、存在価値と使用価値があり、使用価値は人目線で生態系サービスと呼ばれる。生態系サービスは4つに分類され、水資源、食料資源、エネルギー資源などの資源の供給サービス、気候、水浄化、減災などの調節的サービス、感動や学び、楽しみの場のような精神的な面の文化的サービス、生態系そのものを維持である基盤的 サービスがある。

 多様性が高いほうが生態系は安定で、冗長性も安定化に寄与している。

 隔離されることが絶滅の一因になるが、隔離には地理的隔離と生態的隔離がある。生態的隔離には昼行性グループと夜行性グループに分かれて、別の遺伝子プールとみなせるような場合を生態的隔離と呼ぶ。

 保全単位の外へ生物を持ち出すことは侵略的外来生物を生む可能性がある。被捕食者は防御的進化を起こすことで食べ尽くしがおきないようにしてきた。侵略的外来生物は、防御的進化が起こる前に食べ尽くしてしまうことがある。

 同一ニッチに複数種が存続できる要因は3つあり、優位性の順序が一貫していない場合、環境が時間的・空間的に変動することで優劣が入れ替わる場合、勝負がつかないうちに攪乱で、競争が振り出しに戻る場合がある。里山では二つ目のモザイク環境、三つ目の攪乱があり、生態系が保たれてきた。

 四十億年前に生命が誕生してから、五回の大絶滅が起き、現在は六回目の大量絶滅の最中である。六回目の大量絶滅の第一波は五万年前の出アフリカ、第二波は千年前の太平洋進出、第三波は、四百年前に始まった工業化。

 一方で個体数を増やしている種も多い。例えばニホンジカ。餌の不足する冬季は樹皮も食べてしまうため、ニホンジカの食害で立ち枯れの木が増えている。また、鹿の好まない植物だけが食べ残され、植生が変化している。温暖化による冬季の鹿の生存率の上昇、発達した道路網を利用しての移動、緑化により餌の牧草の増加などの理由による。

 侵略的外来生物のうち世代交代の早いものは、初期の対応をためらうと爆発的に増加する。ハルジオン、ネズミムギなど除草剤抵抗性を獲得している種も多い。

 多くのカエルが絶滅している。これはペット用の乱獲、酸性雨オゾン層の破壊、カエルツボカビ病、化学物質による免疫弱体化、異常気象、生息場所の喪失および孤立化などの要因による。カエルは皮膚が露出しているため紫外線や外気、水質の影響を直接受けてしまう。また水辺と森林の両方を必要とすることも原因となる。

 絶滅要因は大きく分けて決定論的要因と確率論的要因の二つがある。決定論的要因にはアリー効果、近親交配で生まれる子は、早期死亡リスクが高く、繁殖力、生存力が低いという近交弱勢がある。確率論的要因としては、環境確率変動性、カタストロフ、個体群統計確率変動性、遺伝的確率変動性(遺伝頻度の偏りによる種内多様性の低下)がある。

 競争が激しいときは個体密度上昇は個体群の適応度が下がることになる。逆に競争がほとんど問題にならないときは、個体数の増加は適応度を上げることになる。これをアリー効果という。例えば、孤立化した花の集団が複数あるとき、ハチなどの送粉生物は小さい集団の方には来なくなる可能性が高まる。また、シマウマの群れが餌をたべているとき、集団のうちの一頭が見張りを行い、見張りのシマウマは餌を食べられない。200頭のシマウマの群れと、2頭の群れを比較すれば、餌をとる時間や効率に約2倍の違いがある。

 個体数の減少、アリー効果の喪失、近交弱勢がからみあいスパイラルとなって絶滅に至る。