きまぶろ

本とアニメと気ままな生活のブログ

タイムマシンでは行けない明日(畑野智美)

「一人でいることも大事だと思うけれど、その自分を肯定して、寂しいことに慣れないでほしい」

 

 タイムマシンの関わる小説は世界の方向性を大きく変えるものが多いが、この作品では世界を変える発明品としては使われていない。世界線の移動が副作用になっているくらいである。小道具の一つといった程度だ。登場人物たちも自分のために、世界のために有効に使おうという欲がない。

 良くも悪くも主人公は淡々として、感情の振れ幅が小さい。安心して読みやすいのではあるが、物足りなさも残る。

 未来に行くタイムマシンと、過去に戻るタイムマシンは根本的に異なるものだが、この作品ではFAXのように人間を転送している。タイムマシンについて思いを巡らすと想像が膨らんで楽しい。過去または未来に一度だけ行って戻れるとしたらどちらが良いか。未来の情報を得てから、現代に戻るのもよし、過去の世界を改変してくるもよし。過去を改変しても、再び似た状況に収束するのか。それともバタフライ効果のように影響が広がり、予測不可能な大きな変化になるのか。新たな世界へと分岐するのか。想像が尽きない。