きまぶろ

本とアニメと気ままな生活のブログ

リバース&リバース(奥田亜希子)

 冒頭のページは女子中学生の悩み相談とその回答。相談の内容は同性の女子に告白され気持ち悪く、どうしたらいいかというもの。

 

 女子中学生向けのファッション誌で悩み相談の回答を担当する男性編集者、地方の小さな食品店で祖母の店を手伝う中学生の物語が交互に語られていく。オセロの白と黒の駒のように。実際にオセロの駒がセクションわけに使われ、白の章が男性編集者、黒の章が女子中学生だ。オセロは特に海外ではリバーシと呼ばれる。ひっくりかえすリバース(reverse)からとった名前だ。白だったものが黒になり、黒だったものが白になる。立場を入れ替え、人は傷つける側にも傷つけられる側にもなる。それがリバース。発音は異なるがリバースには別の単語もあり、タイトルのリバース&リバースにつながる。

 男性編集者の職場は女性ばかり。モデルも全員女子中学生だし、他の編集者も女性ばかり。会社内で男女問題が持ち上がりそうだが、そんなことはない。友情にも恋愛にも挫折した経験をひきずっているのだ。その分だけ真剣に悩み相談に向き合っている。

 小さいころから友達の面倒見のよかった女の子は、東京から越してきた魅力的な男子のせいで心が揺らいでいく。そして自分の気持ちを知り行動を起こす。

 

 以前にも奥田亜希子の短編集を読んだことがあるが、せつなく甘い物語がすばらしい。描写も生きていて、映像を見ているような錯覚に何度も陥る。