きまぶろ

本とアニメと気ままな生活のブログ

僕と彼女の左手(辻堂ゆめ)

「いくつもの嘘から解放された彼女は、いつにも増して、キラキラと楽しげな光を放っていた」

 

 私大医学部5年の実習を生理的に拒否し留年が決まり、行き場のなかった習(しゅう)は無為に時間を過ごしていた。大学の医学部棟で見学中に道に迷ったさやかに声をかけられ、習は教育学部志望のさやかに勉強を教えることになる。右手が使えなくても明るく前向きなさやかに惹かれていく。さやかの夢はかなうのか。

 

 タイトルの「僕と彼女の左手」は「僕と、彼女の左手」「僕(の左手)と彼女の左手」「僕と彼女の、左手」などの意味に取れるが、「僕と彼女の、(彼女の)左手」が最も近そうだ。

辻堂ゆめの作品を読むのは「悪女の品格」に続いて2冊目。自己中心的で、根っからの悪人が出てこない。軽く読めるミステリーと言える。ただ、ミステリー色をなくしても十分いけそうだ。伏線もきちんと回収して、どんでん返しも2度あるが、説明しすぎにも思える。いずれにせよ今後が楽しみである。