深く考える力（田坂広志）

　深く考え、ひらめきを得る力はどこにあるか。経験豊富な筆者からのメッセージ。

　「深く考える」とは、長い時間をかけて一生懸命に頭を絞ることではなく、自分の中にいる「賢明なもう一人の自分」と対話をすることである。「賢明なもう一人の自分」は論理思考を超えた鋭い直観力と、データベースを超えた膨大な記憶力を持つ。「無意識の自己限定」が働き、賢明なもう一人の自分を信じないと、力は発揮を妨げ委縮させてしまう。

　「賢明なもうひとりの自分」が現れるには、自分の考えを文章に表し、しばらく後に読み返す。重要なのはそのアイディアがすべてだとは思わないこと。そして、異質なアイディアを敢えて結び付けてみる。また、自分自身に問いかけ、その問いかけを一度忘れてみる。自分自身を追い詰めるのも一つの手である。