きまぶろ

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困った老人のトリセツ 25の事例と解決策(和田秀樹)

 和田秀樹の本を読むのは「高齢者差別」についでこれで2冊目。

 

 危ないからやめろ、これはダメと、次々に楽しみを奪われて行くと、人は心身ともに内にこもるようになり、脳も体も衰えて認知症になったり、寝たきりの原因にもなる。やがて自分も年を取るということを知識をして知っていても、感覚的に受け入れることはできていないが、「やがて行く道である」ことを忘れてはいけない。

 「困った老人」化するのは、高齢者への理解が進んでいないことも一因である。

 困った行動の原因の多くは脳にある。高齢による脳の変化は、前頭葉の縮みから始まる。前頭葉は思考・意欲・感情・性格・理性などを司る部分で、前頭葉が衰えると意欲の低下、感情抑制機能の低下、判断力の低下、性格の先鋭化が起こる。

 一緒に新しい楽しみを見つけて、脳の萎縮スピードを遅らせるか、こまめに連絡をとって孤独にさせななどで、困った行動の多くは止められる。

 高齢者はセロトニンが減ることでうつ病リスクが上昇する。セロトニンは快楽や喜びをもたらすドーパミン、恐れや驚きに関わるノルアドレナリンなどをコントロールし精神を安定させ、多幸感をもたらす。

 高齢者は社会的に自己愛を満たすことが難しくなってきている。

 若い人にとって合理的に思える解決策が、必ずしも高齢者にとってよい解決策になるとは言えない。

 感情が老化してからでは、新しいことに興味が持てず、新しいことを始めにくい。40代、50代のうちに、長く続けられ、脳にも刺激が与えられる趣味を始める。

 独居が不幸だというのは単なる思い込みで、自殺率は同居老人の方が高い。これは家族に迷惑をかけているという自責の念による。要介護の高齢者を経験のない人が看るのは過酷である。

①免許返納

 踏み間違えは年齢のせいではなく慌てるため。安易に返納しても自転車で事故を起こしたり、引きこもったりする。高齢者がいつまでも元気でいるためには、積極的に出歩いてもらうのがベスト。

②キレやすくなり、見知らぬ人にも暴言暴力

 普段から不満のガス抜きをしておく。おべっかも素直に信じやすいので、こまめに家族で機嫌伺をする。褒めたり相談したりと、自信を取り戻すアプローチをする。

 セロトニン不足でキレやすいときは、肉を多めに摂る。セロトニントリプトファンから合成する。

 感情は40代をピークに老化する。この時期にイライラしたり威張ることが許される職種に就いていると感情の老化が進みやすい。部下の些細なミスが許せなかったり、若い人の言動にムカムカすると感じる人は、自分のルーティンにはないことをしたり、新しいことに挑戦したりなど、前頭葉を刺激して感情の老化を防ぐ。

③万引き

 男性は経済的理由、女性は精神的理由(うつ、配偶者死別)が多い。続くなら認知症診断も。

⑤妄想、せん妄

 妄想を否定せず、「私はそんなことをしていないけど、心配だよね(心配かけてごめんね」などと対応する。疑いをかけられても感情的にならない。妄想が切迫してきたら専門医に相談する。うつ病やせん妄は治療効果が高め。

 認知症は症状が進むとうつ病とは逆にニコニコと幸せそうにすることが多い。認知症でも問題行動を起こす人は10%程度で、生活に必要なスキルは失われずに残っている。

⑦パチンコにはまる

 依存なら治療をし、趣味程度なら容認する。他の楽しみを見つけさせるなら家族が同行する。

⑩再婚

 歓迎すべき。孤独は早死にのリスクがある。財産目当てであっても、相手は最後まで共に暮らすという覚悟があるだろうし、仮に財産を騙し取られたとしても生活保護がある。

 高齢者が元気でいるには、身体も脳も使い続けること。ただTVを眺めて過ごしていると見当識が衰える。脳が活性化するのは、自分の興味があることだけである。

⑫睡眠トラブル

 安定剤(ベンゾジアゼピン系)は頭をぼんやりさせることで寝つきをよくするのであって、眠りが深くなるわけではない。脳そのものの機能が弱っている高齢者が飲むと、起きてからもぼんやりしたり、記憶力が落ちたりするし、転びやすくもなる。非ベンゾジアゼピン系に変えると眠りが深くなるが、多量服薬は危険だし、肝臓にも影響が出ることがある。

 早期覚醒はうつの特徴の一つでもあるので、うつ病の可能性もある。

⑬塩分

 若いときより高血圧、高血糖でないと脳が活動できない。おいしく好きなものを食べるのは長生きの秘訣。

 明らかに食べ過ぎの時は認知症の場合もある。

 食事の際にはじめに炭水化物を摂るとインスリンが大量分泌され血糖値が一気に下がる。このような血糖値の乱高下で内臓に負担がかかり細胞の炎症が起こる。肝臓がスムーズに動き出すようにするために、まずはタンパク質の多い食材から口にする。