きまぶろ

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日経サイエンス 2018年7月 ミクソトロフ

ミクソトロフ

 生物には独立栄養生物(autotroph)と従属栄養生物(heterotroph)がいる。独立栄養生物は植物などのように体外の有機物には依存しない生物で、従属栄養生物は動物などのように体外の有機物に依存する生物だ。それらの両方の特徴を持つ混合栄養生物(ミクソトロフ、mixotroph)もわずかながら見つかっていた。身近な混合生物といえばミドリムシだ。葉緑体を持ち光合成をするのに、鞭毛を使って動くことができる。

 最近の研究で海洋プランクトンの多くはmixotrophだとわかった。mixotrophもさまざまで、遺伝子的に光合成関連物質を代謝できる恒常性混合栄養生物、ほかの生物を捕食し細胞小器官などを吸い取って光合成をする非恒常性混合生物がいる。なかには捕食した生物と共生するタイプもいる。このmixotrophが地球最初の生命である可能性も浮上してきた。

 生命の出発点は謎だらけで疑問が多い。素材の有機物は地球由来なのか隕石由来なのか。遺伝と代謝はどちらが本質的なのか。最初の生命は従属栄養生物か独立栄養生物か。従属栄養生物だとすると、環境の変化で餌となる有機物が枯渇したり、自身が周囲の有機物を食べつくしたりして死滅してしまう。独立栄養生物なら周囲に有機物は不要で、熱水噴出孔付近で水素や硫黄のエネルギーを利用してゆるやかに生きていける。エネルギー源として岩盤の電流を利用するものまでいる。だが、mixotrophが最初に生まれ、環境に合わせていずれかの能力を失っていったというシナリオも出てきた。

 与那国島の北方の熱水噴出域で見つかったタカイ菌はTCAサイクル(クエン酸回路、tricarboxylic acid cycle)を時計回りにも反時計回りにも回せることがわかった。酸素を使う従属栄養生物はTCAサイクルを時計回りに回し二酸化炭素を放出する。独立栄養生物の一部はTCAサイクルを反時計回りに回し二酸化炭素を吸収する。タカイ菌は独立栄養モード、従属栄養モード、混合栄養モードの3つの切り替えができる。いずれのモードもTCAサイクルを駆動するエネルギー源としては有機物ではなく、水素と硫黄から得ており、独立栄養に軸足を置いているとも言える。

 

今月の英語

chloroplast 葉緑体 chloro:「緑」を意味するギリシャ
chlorophyll 葉緑素
autotroph 独立栄養生物 auto:「自前」「独自」 troph:「栄養」
heterotroph 従属栄養生物 hetero:「外の」「異なった」
red dwarf 赤色矮星
brown dwarf 褐色矮星
red giant 赤色巨星
logarithmic spiral対数螺旋
gastropods 腹足類 gastro:「胃」、pod:「脚」
cephalopods 頭足類 cephalo:「頭」
systolic blood pressure収縮期血圧 =maximal blood pressure最高血圧
diastolic blood pressure拡張期血圧 =minimal blood pressure最低血圧