きまぶろ

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対人距離がわからない(岡田尊司)

 親密さと対人距離の関係について、10に分類したパーソナリティでグラフ化したデータを豊富に使って解説。後半は対人関係を操る技術、幸福な対人関係の築き方について。

 

 10のパーソナリティー(障害とまでは言えないが、誰でも偏りはある)

①回避性パーソナリティ

 傷つくことや失敗することを恐れ、一歩踏み出せない。

②妄想性パーソナリティ

 人を信じられず猜疑心が強い。パートナーや家族に対しても裏切られているという疑念を抱く。

③シゾイゾパーソナリティ

 孤独を好み、他人と何かをすることに興味や喜びが乏しい。単調な生活をあまり苦痛と感じず、興味あることには努力が続く。自分だけの世界にこもり、遁世したように暮らすことを理想とする。ASDの消極タイプが移行したものと考えられる。

④失調型パーソナリティ

 常識にとらわれない発想、クリエイティブな発想をする。ときに非常識で変人扱いされる。ASDの積極奇異型と関連がある。

⑤強迫性パーソナリティ

 真面目で倫理観や責任感が強く、決まった通りにするのを好む。実直だが融通が利かない。勤勉な努力家。

⑥演技性パーソナリティ

 芝居がかった振る舞いや性的魅力で注目や関心を惹きつけようとする。対人距離が過度に近く、ボディコンタクトも多い。

⑦依存性パーソナリティ

 自分一人では生きていけないと思い、相手の機嫌を損ねまいと過度に気を使う。決断が苦手。信じるものを必要としている。

⑧境界性パーソナリティ

 自己否定と自己破壊的な行動が特徴。自傷オーバードーズ、自殺企図をくり返す。見捨てられることの不安が強く、親密になるとかえって不安定。急に落ち込んだり怒ったりする。

⑨自己愛性パーソナリティ

 高いプライド、過剰な自信、誇大な理想が特徴。自分を神のようなものと思っている。思いやりが乏しく、自分都合で相手を利用する。

⑩反社会性パーソナリティ

 道徳的な規範が乏しく、他人を冷酷に搾取する傾向がある。スリルを好み、危険に鈍感。かつてはサイコパスと呼ばれた。

 

 現実に社会でうまくやるには真面目な努力や責任感も大切だが、それ以上に芝居がかった演技、巧みな嘘、自分勝手に相手のことを利用する人のほうがうまくやっていけている。人ひとりの能力などたかが知れている。優れた人を大勢味方にして助けてもらったほうがはるかに効率よく目的を達成できる。

 成功や幸福の形は一つではない。社会的スキルが高い人と同じ幸福を求めようとすると分が悪いが、自分のスタイルに合った範囲で幅を広げることは人生のポテンシャルを高めることにもつながる。

 愛着は生物学的な仕組みで、ホルモンの一種であるオキシトシンが関連している。愛着のタイプとして安定型、回避型、不安型がある。安定型は関係の盤石性が高く、恒常性を持った盤石な関係が築ける。回避型は親しみの感情を持ちにくく、たとえ持っても接近を避ける。不安型は愛情の証を過剰に求める。顔色を窺い、相手の反応に左右される。

 対人距離 =愛着回避+愛着不安

 対人執着度=愛着不安-愛着回避

 共感には2種類あり、身振り、表情、気分に同調する情緒的な共感と、相手の立場に立って理解する認知的共感がある。

 偏桃体は恐怖などの情動の中枢である。偏桃体の活動低下で、本来感じるはずの恐怖や不安を感じなくなる。先天的な場合もあるが、過酷な体験が原因となる場合のほうが多い。

 適正な距離がとれない4つの場合

①親密、愛情、関心を過度に求める

②相手を利用対象とし、自分の都合だけで接近

③社会的なサインや相手の拒否が読み取れない。

④行動や欲求に対する抑制が低下している状態にある

 人は高尚なことばかりで悩むとは限らない。痛み、痒み、音、匂いなどの感覚特性も悩みの原因となり、対人距離に影響を与える。

 4つの感覚特性

①低登録 :感覚が鈍く、鈍感で気づきにくい。ぶつかりやすい、物を探せない、朝が苦手。

②感覚探求:新しい刺激を求める傾向(新奇性探求)

③感覚過敏

④感覚回避:不快な感覚を避けようとする傾向

 探求型の人は我が子といえども育児だけに縛られたり、パートナーも一人に縛られると息苦しさを感じる。これは先天的なもので、押し殺すより縛られないライフスタイルを選んでいきたい。

 ASDは自責、他責とも多く、中立が少なく両極端の反応をする。普段は相手にあわせていても、ストレスで急に攻撃的になる。幸福度と最も強い相関を示したのは無責であった。誰も責めずに中立的に対処するのが精神衛生的には最良である。

 耳で聴きとった音声や言葉を短期間、記憶に留めるメモ的な記憶能力を作動記憶と呼び、聴覚的な情報処理の良い指標になる。作動記憶がプラスの人は講義形式に強く、マイナスの人は独学向きで、表に立たず裏方が向きである。

 相手の心を読み戦略的に行動する社会的知性を進化させることで、ヒトは脳が大きくなり、道具や言葉を使うようになったと考えられる。これを「社会的知性仮説」と呼ぶ。ふりをして相手に信じ込ませること、つまり演技することが社会性の本質であるとも考えられる。

 微かな伝手さえも、チャンスとみたら、しがみつき絶対に後に引こうとしない図々しさは成功する人に共通の性質である。遠慮などしていたのではチャンスは来ない。正しいかどうか、事実かどうかを考えず、上手に嘘をつき、相手が喜んだり感動したりを重視する。人間関係において大事なのは正しいかどうかではなく、相手も喜び、こちらも得をすることである。ただの善人な人はこの世では成功できない。

 他者との良い対人距離が築ける人だからといって幸福になるとは限らない。他者の安全基地となる、あるいは他者が安全基地となる必要がある。安全基地にめぐまれなくとも、自分が誰かの安全基地になるように努力することはできる。