きまぶろ

本とアニメと気ままな生活のブログ

ふがいない僕は空を見た(窪美澄)

 年上の主婦とコスプレセックスを重ねる高校生の斉藤。姑に不妊治療を強制される女性。やっかいなものを何とか乗り越えようとするのではく、抱えたまま生きていく物語。お金とセックスは生きていくのに必要で避けて通れない。「ミクマリ」を含む5つの連作。R18文学賞大賞、山本周五郎賞受賞作。

 抱えたものを乗り越え前向きに生きていくといったよくある作品ではなく、悩みも心の穴も、特殊な性癖、嗜好も抱えたまま生きていくというリアルな物語。LGBのように世間にありふれている嗜好ならまだよかったのだろうが、道ならぬ性癖は付き合い方が難しいものだ。

 していることは最低にも見えるが、なぜか里見は交換が持てた。姑にひどいことをされても、旦那が味方になってくれなくても、仕方がないと諦め誰も責めていないからだろう。ラスボスである姑の呪縛がなくなれば慶一郎も離婚を承諾してくれるかもしれない。そうすれば、里見と斉藤が結ばれる可能性もありそう。誰からも後ろ指差されることなくコスプレできる。いや、すでに動画流出でそう簡単にはいかないだろうが、斉藤君ならなんとかしてくれると期待したい。里見は頑張って強く生きていってほしい。いや、頑張らなくてもいい、そのままでいいから世間という名のマジョリティなんか気にしないで無邪気であどけなく生きていってほしい。

 窪美澄の小説を読むのは「水やりはいつも深夜だけど」「やめるときも、すこやかなるときも」に続いてこれで3つめ。他のもぜひ読みたい。