きまぶろ

本とアニメと気ままな生活のブログ

ユリゴコロ

 タイトルと裏表紙の紹介から想像したのは殺人嗜好を持つ4人の女性の物語だろうということ。実際は全然違っていた。1人で4冊もの長い手記を書いたのだ。何のため?入れ替わり妄想で主人公は統合失調症なのか?性別を曖昧にした目的は?そもそもノートの告白は事実を書いているのか?育ての母の死は本当に事故死? 婚約者はなぜ失踪?ユリゴコロという言葉の意味は?細谷さんが千恵の件を独りで内密に処理しようとして気がするのは裏があるのかなど、謎が増えてく。何かしらのトリックが隠されているだろうと期待して読み進めたが、トリックは一切なかった。「トリックだと思った?残念でした、ノートリックだよw」と肩透かしである。主人公が見つけやすいようにノートを配置したようにもみえたので、実は父親がでっち上げたとか、あるいは育ての母がでっちあげたとか、書いたのは実は祖母で生まれたのが父だったとか、すべて夢や幻覚だったとかなどということもなかった。ノートでは性別をわざと曖昧にしている点に何度も言及し強調ていたが、目的は読み取れなかった。それに、真実味のない手記のみで家族3人で示し合わせて自分の娘や姉を殺すというのは腑に落ちなかった。

 母親の入れ替わりが頭になかなか入ってこなかった。物知り顔の弟によると、母親の入れ替わりは2度あったとか。さらに父の告白で本当の母は恵美子だという。本当の母とは主人公を生んだ人という意味だろうか、それとも育てた人だろうか。育てたと言っても、入れ替わりが何度もあればどの段階だろう、とハテナマークがたくさん。死を前にした父が主人公に語るときも「母」という言葉が多く出てくるが、父の母なのか、主人公の産みの母なのか、育ての母なのかわからず読みにくかった。最後の最後までどんでん返しを予感させる書き方はただものではない。