きまぶろ

本とアニメと気ままな生活のブログ

十年交差点(中田永一、白河三兎、岡崎琢磨、原田ひ香、畠中恵)

「十年」をテーマにしたアンソロジー。yomyomの2016春、夏、冬号に初出したものをまとめた文庫。それぞれの作家らしさが出ている。原田ひ香の作品を読んだのはこれが初めて。

 

地球に磔にされた男:

 時間跳躍は10年前にいったん飛び、間を開けずに再び10年後に飛ぶことでワンセットとなっている。この時間跳躍機構により、異なる世界線へ移動が可能になった。もとの世界線と異なるのはここ10年間のことだけ。東日本大震災はどの世界線でも起きていた。やさぐれた無職の主人公が時間跳躍を繰り返し、さまざまな自分と会っていく。生きる意味とは、幸せとは。

 

白紙:

「10年後の自分」というテーマの作文を白紙で提出した高校生の小登乃に、作文を再提出させる担任の大塚。小登乃の弟の担任からは夜逃げするのではないかという憶測を聞かされる。小登乃が再提出した作文を縦読みすると・・・。

 

ひとつ、ふたつ:

 ターナー症候群で子どもを産めない巴瑠はアクセサリーショップを経営する傍らで、ターナー症候群についてのブログも運営していた。前に交際していた男性とはカミングアウトで別れてしまった。そして、付き合って半年の今の彼からプロポーズを受けるが、巴瑠は断ってしまう。巴瑠は幸せな未来をまた手放さなければならないのか。

 

君が忘れたとしても:

 姉の死後に、姉の子の壮真を我が子のように育ててきた結実子。フルタイムの仕事を辞めて自由の利く仕事にし、壮真と同じマンションに引っ越しもした。しかし、壮真の父が再婚することになり、壮真と引き離されていく結実子。結婚もせず世間からも遅れていき、虚しさと悲しさが募る。だが、成人した壮真と10年ぶりに会うことになった。結実子は虚しさも悲しさも喪失感も一気に吹き飛ばすような再会をする。泣ける短編。

 

一つ足りない:

 河童vs猿