きまぶろ

本とアニメと気ままな生活のブログ

アリス殺し(小林泰三)

「人の命が大事だなんて、本当に信じている訳じゃないわよね。人を殺したら、自分が罪に問われるから、大事なふりをしているだけよね」

 

 地球と不思議の国がリンクしている世界で連続殺人が発生する。地球では犠牲者は不可解な死に方をし、不思議の国ではアリスが犯人として疑われる。地球人のアバターが不思議の国の生き物なのか、不思議の国のアバターが地球人なのか。いずれにせよ、対応するアバターと人はリンクしており、一方が死ねば一蓮托生。不思議の国に迷い込んだアリスの夢ばかり見ていた大学院生の栗栖川亜理は何とかアリスの疑いを晴らしたいと奔走するが、真犯人に追い詰められてしまう。

 

 胡蝶の夢の殺人といったところか。世界のルールを解明で来たらそれを私利私欲に使おうとする人がでてきてもおかしくはない。序盤の不思議の国はちぐはぐで頓珍漢な会話ばかりで読みにくいと感じる人も多いだろう。人間の認知についても考えさせられ面白い。クイーンの作品に目の不自由な人が手で犯人に触れる、つまり触覚で「目撃」というがあったが、本作では白兎が嗅覚で犯人を「目撃」というのも動物らしい。教授>准教授>講師>助教>助手という職階があるのも初めて知った。