きまぶろ

本とアニメと気ままな生活のブログ

そのバケツでは水がくめない(飛鳥井千砂)

 アパレル会社でMDを務める理世はかつてより温めていた構想をもとに新ブランドのチームに抜擢され、そこで発掘したデザイナーの美名とも親交を深めていく。美名のデザインセンスも冴えていて新ブランドも滑り出しが好調だが、理世は次第に美名から感情的に振り回されて行く。美名の過去のパートナーから話を聞き、本性を知った理世は決断をする。

 

 理世の揺れる気持ちの描写が素晴らしい。デザインの才能も優れ人を取り込み翻弄し自分の血肉とする才にも長けている美名は恐ろしくも美しい。人が二面性を持つのは当たり前だが、どうしても突出したある評価にすべてが引っ張られてしまうものだ。理世もタイミングを逃さず勇気を出して逃げられて良かった。