きまぶろ

本とアニメと気ままな生活のブログ

青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない

 高校生の咲太は空気を読むことはできるが、敢えて空気は読まない。いじめが原因で妹が不登校になるとスマホを海に捨てて空気を読まない生活を始めた。咲太は思ったことはストレートに言い、相手にもそれが咲太の本心からの言葉であると伝わる。そして必要とされる人には側にいる。その咲太のおかげで思春期症候群を患ってしまった先輩、同級生、妹が回復を遂げる。

 思春期特有の悩みが心身に現れる症状をそのまま表現するのではなく、他人からは視認されない、望ましい未来になるまで何度でも世界をシミュレートしてしまう、人格が入れ替わる、ドッペルゲンガーが現れる、記憶を喪失するといった「思春期症候群」という怪現象で描いている。

 ラノベ風のタイトルで大きな損をしている作品。終盤で作画が不安になるが、会話のキャッチボールも楽しいし、主人公やヒロインの歯にきぬ着せぬ台詞は心地よい。涙なしには見られない妹かえでのエピソードもある。自分を理解し支えてくれた兄が「また何もしてやれなかった」と自分を責めてほしくない。その思いだけで前へ進もうとするかえで。記憶喪失中のかえでの日記を介して本来のかえでにも兄の気持ちが伝わる。

 自信がない人は他人からの評価ばかりを気にしてしまうが、それだと本当の意味での自信がつくことはなく、自己肯定感は養われない。時には悩み時には失敗しながらも自分のことは自分で決め自分で責任をとる。これがいずれ自信に繋がる。いつになっても何歳でも再スタートはできる。小さなことからでもいいので自分らしく生きてほしい。