きまぶろ

本とアニメと気ままな生活のブログ

地球星人(村田沙耶香)

生物学的には地球星人と差異のないポアピヒンポボピア星人の3人。違うのは地球星人として洗脳されていないことだけ。地球星人は仕事、結婚、出産をし、世代交代を続けていく「工場」である。工場の一部たれと、あらゆる地球星人から促されるたびに、自分たちは地球星人とは違うという気持ちが強まっていく。小学生の時に塾講師から猥褻行為を受け味覚や聴覚にも異常を来たした主人公は夢を見ているような状況で塾講師を殺害し、それ以上の難を逃れる。「何があっても生きのびること」を最優先にポアピヒンポボビア星人のサバイバルが続く。

 

地球星人と共存するためには金と食糧の調達の優先順位のトップに来ることが抜け落ちている。地球星人の作った法や道徳に縛られる必要はないが、拒絶するだけでは自滅へと向かってしまう。近親相姦、殺人、食人を躊躇わずできるのだから、冷静な対応で別の未来もあっただろう。

 

ただポアピヒンポボビア星人が滅んだわけではなく、3人とも生存している。もしかしたら、あのあと増殖しているのかもしれない。

 

村田沙耶香の本を読んだのは「殺人出産」に次いで2冊目。子を産むこと、人を殺すこと、生き残ることというテーマが共通している。