きまぶろ

本とアニメと気ままな生活のブログ

茅葺きの民俗学(安藤邦廣)

 日本建築学会奨励賞(第一回)

 茅葺きの家を見てノスタルジーを感じたり、消えゆく伝統文化を守るなどではない。どのような仕組みで葺き替えをしていたのか、生活の場として茅葺きの家で暮らすとはどういうことかを、地域ごとの違いも踏まえて写真と図、資料で解説している。

 

 ススキやアシは収穫に手間がかかるが、小麦や稲と比べ耐久性が3~10倍もある。茅葺きの建物は雨音がしないし、室内の反響もなく静かである。通気性や断熱性にも優れている。最大の弱点は火事に対する弱さである。

 

 茅は放牧、伐採、開墾、造成などで森が破壊されたところに生える。まとまった量の茅を手に入れるためには、人の手による管理が必要となり、このように確保された専用の土地を茅場と呼んだ。屋根面積の5~10倍の土地が目安となる。放置すると陽樹が侵入しやすいので、適切が手入れが必要となる。東京の茅場町は江戸の茅職人が住んだ土地である。

 茅の屋外貯蔵をする地域では、円錐型の「にう」の形での貯蔵が多い。雪国では「雪囲い」として貯蔵をしている地域もある。使い終わった茅は良質の肥料になる。