フィクション
悩める小中学生に光が差す4編。
「子どもは無知でも無能でもない。そして母親は博識でも万能でもない。」 昆虫大好き(食べ物的な意味で)で読書感想好きな女子高生のスガリさんに押し付けられた「こころ」「手袋を買いに」の感想文から、軟弱高身長系男性家庭科教師が事件を解決するお話し…
アポロンに見初められ、未来を予知する能力を授かったカッサンドラはアポロンが浮気をする未来を知ってしまいアポロンを避けるようになる。アポロンは怒り、人々がカッサンドラの話を信用しないように仕向ける。カサンドラ症候群の由来となるエピソードであ…
未来を知ってしまうと途端に人生はつまらないものになり果てる。 「花嫁の父」「人生の結末」「空缶の研究」「静寂」が面白かった。
「彼女は年齢を患っているのだ」 高校の頃に心を寄せラブレターも書いたが返事をもらうこともかなわなかった。アラサーとなった主人公が通勤時の駅のホームでその子が昔のまま高校に通う姿を見かける。いったい何が起きているのか、なぜ彼女は18歳のままなの…
隙間時間に読める短編集。子どもたちにも人気。 「会えるのは一度だけ」「素敵なドラマ」「誕生」が特に面白かった。
「優しいだけの人もいなければ、悪いだけの人もいない」 学校に何を期待しているのだろうか。先生に何を期待しているのだろうか。期待など捨てて、自分が行きたいと思える場所に変えるように働きかけてみる。うまくいかなければ学校など行かなくてもいい。 …
大正時代のような文体で感心したが飽きが早く来た。
「人を救う仕事なんてない。そんなものは仕事であってはいけない。奇跡の領域だ」 水にまつわる生き物のようにからまり、もつれ、形や関係を変えていく連作短編集。どの章も明るい未来を予感させる。
バカやオタクの恋5編 金曜のバカ:女子高生とストーカーが毎週金曜にリアルバトル 星とミルクティー:流星群の夜に心を交わした高校生男女。だが、ともに付き合っている人がいる。 この町:松山を全力でディスる男子高校生。つきあったばかりの彼女と東京お…
「ぼくが君にできること。それは、自分の走りを見せることだけ」 2人の幽霊ランナーが登場する。一人はマラソン大会で小3から3年連続で、スタートラインで棄権した少年。もう一人はトップランナーとしての記録を持ったまま中学で亡くなった少年。二人の幽…
「どうするかは自分で決められる。できることをやり抜く。できないことを悔やむのではなく。」 総理が訪問中の武蔵小杉高校を武装勢力が占拠し、数百名の生徒、教員、SPを殺害する。高校には平成最大のテロを起こし死刑が執行されたテロリストの娘が通ってい…
祭りをテーマに大人の男女の関係が新しくなる6つの短編集。古来から伝わる祭りへの参加者たちの思いと、ふとしたことで祭りに関わった者の描写がすばらしい。むつみごとの妖しい表現も引き込まれる。 村山由佳の本は「ワンダフル・ワールド」「天翔る」に3…
書店を舞台にした連作ミステリー。主人公の杏子が語り手、アルバイトの多絵が探偵役。いずれも読後感が爽やかではあるが、逆に軽すぎるという感じも受ける。謎としては短編で終わらせるにはもったいないものもあり、長編化できそう。
心にしみいる絵のない絵本。「幸せは自分が決める」「希望は伝えられる」「豊かさとは」「受け継がれるやさしさ」「生き方が人生になる」をテーマにした5つの作品。 意表をつく展開の「幸せは自分が決める」で引き込まれ、「受け継がれる優しさ」が良かった…
自殺に成功した者と失敗した者の会話が始まったところで読むのをやめようとおもったが、読み進めてよかった。自殺を試みる人たちを描いた小説ではなく、ミステリーサスペンスとしてどんでん返しも意表をついてきて面白い。
4人の執筆者による、悪魔をテーマとして26の掌編。 プロローグからして読者を引き付けて面白いし、本編も期待を裏切らない。
「こんなに笑えるのなら死ぬ必要なんてないような気がする。それとも、死ぬって決めたから笑えるのだろうか」 小4のときに仲良しの友だちに取り返しのつかないことをしてしまったと後悔している音羽(とわ)は他人の微妙な問題に踏み込むことを恐れ見て見ぬ…
映研の撮影を続ける中で感じる齟齬。それは町に隠された世界の綻びだった。 量子もつれで思い出したのはミクロの世界の不確定性がマクロ世界では現れていないように見える現象。どこまでがミクロでどこからがマクロ化という話にもなるが、解像度が違うせいで…
「私は私のままの私が大好きなのです」 「わたし」は自分のどこをとっても自信がなく、友だちもいないし、将来も見通しが立たない。どんどん沈んでいくような中学校の3年間を過ごした最後に、ダメなままでも大丈夫、好きなものとすきなことさえ見つかれば生…
黄の花のワンピースを着て出かけると不思議な嬉しいことが起こる。小5のときに途切れたままの記憶が今またよみがえる。自分の手で翻訳した本を通じ歩みを振り返る。 詩のような表現描写が目を引く。
「しなくちゃいけないといわれたから、しなくちゃいけないって思うのは、それは考えてないってことじゃないのかな」 引っ越ししてから通い始めた英会話スクールでもやもやを募らせ、サボった先の家の庭でおばあさんの物語を聞き想像の世界につかる朋。英会話…
連作短編集。最大の謎は怪人の正体。 この手の本はどの系統なのかわからないまま読めるのが良い。怪異が実際に存在するのか、あるいは特定の個人や団体が怪人なのか、あるいは枯れ尾花なのか。 この本はさらに、各短篇の人間模様が面白い。特に6章が良かっ…
学級崩壊、校内暴力、いじめ。勇気を出し、自分でできること、自分にしかできないことをする。できることは必ずある。間接的な働きかけでもいい。開き直ると肝が据わり局面を打開できるときもある。
ラジオラジオラジオ: 地元のラジオ局のパーソナリティを始めた高3女子2人は、進路の違いからぎこちなくなる。せつない。 青と赤の物語: 物語の禁じられた世界で、中学生の男女が図書館の地下に眠る物語に初めて触れ、親殺しや自殺を思いとどまる。
大学四年生の圭子は六本木のクラブで生活費を稼ぎながら出版社への就職に苦労していた。台風の接近により停電した中を帰宅中にクラブの客の国枝が人を殺していたのを目撃し、恐喝に手を染めてしまう。出版社への紹介を餌にする男や同郷の男にも付きまとわれ…
始業式の朝に突発性難聴にかかり、左耳の聴力を失った結は、唯一の家族である母にそれを伝えられるまで一か月かかった。むろん、クラスメートに打ち明けるのは難しく、無難に日々を過ごすことにだけ気を取られていたが、手話との出会いで希望が生まれる。 涼…
殺しあうほど好き。一度殺しただけでは物足りないというラブコメ。多重人格者の人格どうしがイチャついたり、生み出された人格のモデルが実在の異なる時期から取り込んだものだったりと、何か別の話にも使えそう。
術についてではなく、呼吸を合わせることで気が通じる話。小説にしたのはもったいない。
2ページずつのショートショート100連発。イラストも効果的でサクサク進む。