きまぶろ

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日経サイエンス 2018年6月号 新粒子出現か

・オプトジェネティックス

 光合成をする微生物で細胞膜のゲートの役割をするたんぱく質にオプシンがある。オプシンは特定の波長の光に反応して開閉する。このオプシンを生きた枡の神経細胞に導入し、特定の神経細胞の活動とマウスの行動との関連を観察。

 以前は、昆虫の脱皮の遺伝子を導入したのをどこかで読んだ。マウスなら脱皮もしないし、光合成もしないので扱いが容易なのだろうが、少し寒さを覚える。

 

・ポスト標準モデルへの手がかり(Measuring Beauty)

 LHCで行われている実験のうちLHCbでは、他の実験とは異なるアプローチで新粒子を探している。ATLAS実験やCMS実験ではLHCの高エネルギーにより未発見の新粒子を直接作りだすことを目的としているが、LHCbではB中間子の崩壊を多数調べることで「仮想的」な新粒子(virtual particle)の兆候を探すことを目的としている。「仮想的」とは一時的、つまりごく短時間だけ現れて消えることを意味している。仮想流であれば、エネルギー保存則に縛られずない。つまり、加速器のエネルギーに制限されないという特徴がある。日本でもsuperKEK-Bがこのアプローチで2019年から実験がスタートする。スーパーKEK-BはKEK-Bに続く「Bファクトリー」である。Bファクトリーとは、B中間子を量産するタイプの加速器である。

 

ホーキング博士を偲んで

 ホーキング氏に関連し、ブラックホールについての話題が多い。物質が持つ熱力学的なエントロピーは、原理的にには、その物質に記録できる情報量と等しい。また、ブラックホールエントロピー自傷の地平の面積に比例することがわかっている。ブラックホールは膨大な情報を記録できるとうことで、例えば天の川銀河の中心にある巨大ブラックホール「いて座A*」だと、10の80乗GB以上の情報を事象の地平に書き込める。

 現在、地球上での様々な情報データは急速に膨らんでいるが、いつかは10の80乗GBをこえるのだろう。その頃までには、ブラックホールにアクセスして情報を読み書きする手段が確率されるとしたら面白い。

 「人工知能は人間の知能を超える」とした博士の発言も、発言の真意はよくわからない。博士は賭けが好きで、反証されればすぐに負けを認めてきた。この発言も、その延長で、人類への問題提起と捉えるのが良いだろう。

 

今月号の英語

virtual particles:仮想粒子

estrus:発情。エストロゲンの語源。

fallopian tube:輸卵管。解剖学者のFalloppioにちなむ。