きまぶろ

本とアニメと気ままな生活のブログ

白い久遠(浅野里沙子)

 「成長につれ幸せなことより、大変なことの方が多くなり、切実なそして困難な場面が多く訪れるはず。順風満帆だけに彩られた人生などない。孤独を抱きしめて生きるのが人間」

 

 学芸員をしていた美術館をやめ、実家の質屋に戻ってきた涼子のもとに何やらいわくありがな品々が持ち込まれる。美術品への愛にあふれる連作ミステリー。

 ベテルギウス、スィニャチュール、鬼、プラスチック・チョコレート、グラン・フォン・ブランの5編とプロローグ、エピローグの構成。個人的には鬼、グラン・フォン・ブランが気にいった。表現がすばらしく、美術品の描写にも感心させられる。作品には作者の思いが込められている。そして、骨董品には所有者の思いまでも込められているのがよくわかる。

 「最終的に判断するのは自分なのだと、その覚悟はできている」という態度で鑑定には当たっているが、恋はそんなに単純ではない。