きまぶろ

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海に沈んだ大陸の謎(佐野貴司)

 本書は、ムー大陸伝説を地質学的に検証するというかたちで地学の基礎から説明し、大陸と海洋底の違いや、地球の歴史における大陸の成長史などについて解説していきます。そしてタイへようの海底に存在する巨大海台とは何なのかについて考えていきます。さらに、ムー大陸伝説や後ランディ大陸伝説で語られているよりも大規模な転変地異が、地球の歴史において繰り返し起きていたことについても述べていきます。(はじめにより)

 

 ムー大陸の検証にさかれているページはわずかで、火山学および岩石学の専門家が大陸やプレートの構造、生成、移動について中高生でも読めるような解説をしている本である。良く耳にすることも書かれているが、最新の研究成果も踏まえた解説である。

 

 海面下にも火山はあり、海底といえども平坦ではない。巨大海台は海面下の大陸とも言えるものである。巨大海台は巨大火山(群)でできた玄武岩質のものと、ニュージーランドを中心としたジーランディアのように大陸地殻のような花崗岩質の2種類がある。

 海洋地殻はすべて1.8億年以内に生成した新しい近くで上部は玄武岩質、下部ははんれい岩質で厚みは7kmしかない。大陸地殻は40億年前から徐々に生成され、最近のものまでバラエティに富んでいる。大陸地殻の上部は花崗岩が多く、下部ははんれい岩で厚みは30km前後である。マントルの下部はアセノスフェアと呼ばれ対流をしているが、マントル上部は水分の少なさのため流動性が低く、地殻と一体化してプレート(≒リソスフェア)を形成している。マントル上部の厚みは海洋地殻の下では50km~120km、大陸地殻の下では300kmくらいまである。

 リソスフェアは伝導のみで熱が伝わるので温度勾配が大きく、1kmあたり約10度。アセノスフェアは対流で効率的に熱が伝わるため、温度勾配はかなり小さく1kmあたり、0.6度ほど。

 海嶺で生成した若い海洋プレートは10cm/年で東西にわかれていく。ハワイ諸島などが乗っている太平洋プレートは西へ、イースター島などが乗っているナスカプレートは東へ進んでいる。海洋プレートは進むにしたがい自身も海水で冷却され、アセノスフェア上部も冷やされプレートとして厚みを増し、重みでアセノスフェアを押し下げ海が深くなっていく。ゆっくり滑り落ちていくとも言える。海洋プレートが大陸プレートと衝突しもぐりこむときに、巨大海台は削ぎ落とされるが、海洋プレートに強く結びついていると、プレートの動きを変えてしまうこともある。

 大陸と海との違いは、地学では海水の有無は関係ない。大陸棚などのように海面下にある大陸は地球の表面積の10%ほどある。ジーランディア大陸は90%が海面下にあり、熱的アイソスタシーにより4000万年かけてゆっくりと沈降したことがわかっている。