きまぶろ

本とアニメと気ままな生活のブログ

不登校になったら最初に読む本(小林高子)

 全寮制フリースクール元気学園校長による不登校の子どもに関する本。

 

 当事者自身が抵抗勢力になるため不登校の解決は容易ではない。本来の不登校の原因となる悩みと、子どもの拒絶に家族が反応して起こるものをを区別する。子どもはあれもイヤ、これもイヤと自分の前にイヤを並べ、壁で周りを囲ってしまう。この壁は3つの種類があり、それらを区別することで解決へと向かいたい。

 第一の壁:不登校の本当の原因

 第二の壁:親子の葛藤(親のイライラ)で子どもが見えなくなる。

 第三の壁:時間の壁。時間が経てば経つほど高くなっていく。

 不登校を拗らせるのは学校でも社会でもなく家庭である。ここでできてしまう第2の壁は家族の対応次第で抑えられる。態度が悪くふてぶてしくても心は気弱である。言葉や態度に敏感で、すべてが刺激になってしまう。「何が何でも学校へ」「こうあるべき」という真面目さが子どもを追い込んでいる。まずは親が待つことが重要だが、ただ待つだけでは第三の壁が成長してしまうので、次の準備をしておく。

 些細なことが原因で不登校になるという考えは誤りである。不登校には前兆があるもので、些細な事ですら我慢ができないほど精神的、体力的に疲れている状態にある。学校という場所で戦いに敗れて、家に逃げ込んでいるようなもので、背中を撫で、温かいごはんととふとんで休ませたい。学校は大変なところだということを理解してあげる。

 原因ときっかけは別。

 第三の壁は疎外感、体裁の悪さから、同級生に会いたくないという思いが強くなっていく。

 子どもは希望を求めている。「そんなことをしていたら将来生活していけない」、「ホームレスになってしまう」などと、顔を合わせるたびに暗い話を聞かされるとまえむきな意欲が出なくなる。働くほうが学校に行くよりも難しいのに、「学校に行かないなら働きなさい」という言葉をかけるのは不適切。これらのことばは、学校から家に逃げ帰って来たのに、家にもいじめっ子がいる状態と同じである。「これならできるかもしれない」「これならできそう」という希望を語ってあげたい。子どもの不登校が一生直らないと思うと親もやる気がなくなるが、不登校が直ったという話を聞くと親も希望を持つのと同じである。

 子どもは親の期待に応えたい、良くなりたいと思っている。子どもに必要な助けをしてくれる人にその気持ちをバトンタッチしよう。

 「~でないといけない」と思うことが子どもを苦しめ、親自身も不幸な気持ちになる。こういった「こだわりの呪縛」をまず解き放とう。いちどすべての制約をリセットして子供を見つめる。あんなに嬉しかった小さな命の誕生、この笑顔を守り続けようと思ったことが蘇るだろう。子どもにとって必要なのはどこで学ぶかではなく、何を学び何を身に付けるか。家でできるのは子供を落ち着かせること。

 不登校の原因を探るときに子どもが黙ってしまうのは、本人にとって都合の悪いことがあるから。親が納得してくれるような、学校を休む正当な理由が見つからないのである。小さい子どものように、親に解決能力があると思っている間は話してくれるが、力になれないと思ったら口を閉ざしてしまう。

 学校生活で要求されるのは体力、学力、コミュニケーション能力などがあり、同級生と一緒にすごそうとするために体力的にも精神的にも疲れることがある。また認知や価値観が周囲とずれていることもある。

 本人の気難しさのため、同級生など集団との問題が発生することがある。気難しさは本人の能力を高めると、いじけた心と共に消えるときもある。本人の性格かもしれないし、中にはASDなどの「特徴」の場合もある。

 不登校解決への一歩は原因を究明し、実行可能な解決策を考えることである。苦手な部分があるならば、実力をつけさせるという手もある。人間不信にもなるし、できないことの無理は言わずに、できることをさせてくれる人の存在が不可欠。それは親でなく、第三者の力を借りても良い。

 体力のない子→「君の精いっぱいはここまでだよ」と言ってくれる人

 人の中にいるのは怖いと思う子→守ってくれる人

 勉強が苦手な子→わかるように教えてくれ、「ここまでできたら休憩しよう」と区切ってくれる人。

 主導権は親が握り、責任も親が取る。困っている状態の子どもに「どうする?」と聞くのは酷で、答えようがないし、冷静な判断もできない。

 周囲の子も自分のことで手一杯であることを理解したい。仲間とは足並みを揃える者どうしであり、ちょっと変わった行動があると「え、何?」と周囲は身構えてしまう。「この子は、おういう特徴があるけど大丈夫だよ」、「こういうふうに話してあげるといいよ」、「これは今できないから、免除してあげて」などと伝えると周囲も安心できる。本人はもちろん、仲間にも安心が必要である。

 太く香を家族で乗り越えていくためには、まず家族が冷静になることが大事である。そして、家の中では、人を批判する噂話はしない。親しみを持たれる表情をする。目を吊り上げない。眉を顰めない。

 ゲームやネットから子どもの魂を奪い返すには、代わりを用意する必要がある。

 情報やパンフレットだけでなく、親だけでも自分の足で施設を訪れてみる。

 子どもの口から出た言葉は、本当のこともあるし、そうでないこともある。言ってみただけというのもある。子どもは叱られることを恐れ、言い訳はプロ級である。行動、表情、しぐさから読み取るようにしたい。

 カウンセリングは親にこそ有効である。

 不登校のときこそ家庭内の手伝いをしてもらう。家で役に立つなら、社会に出ても役に立つ可能性が高まるからである。

 子どもには国語力が大切で、言葉が分からずにコミュニケーションできないことも多い。小学生は家庭内の会話を増やし、読み聞かせもする。中学からは書店などで手に入れた本を適当に目につくところに置いておく。そして焦らず気長に待つ。親自身も本と接する機会を増やす。

 寮に入るという選択肢もある。母親と離れる効果もあるし、知り合いのいない新しい環境であれば子どもが前を向くことができる可能性が増える。