きまぶろ

本とアニメと気ままな生活のブログ

君が夏を走らせる(瀬尾まいこ)

 底辺高校に通う不良上がりの男子に先輩からの突然のバイトの誘い。先輩の奥さんが二人目の子の切迫早産で入院している間の日中に、1歳10か月の鈴香の世話をするという内容だ。言葉もまだで、ずっと泣き通し。コミュニケーションも取れない状態の鈴香の世話にてんやわんや。

 

 まるで、鈴香がボケ、大田が突っ込み担当の漫才を演じているようだ。「やいやいやい」と泣き始め、何かあるとすぐに「ぶんぶー」と口から出てくる。二人とも必死なのが微笑ましい。このくらい楽しく子育てができるのは羨ましい限り。読んでいると子供が欲しくなってしまう。

 何度か元不良仲間と絡むシーンから良くない展開も匂ってきたり、吹奏楽部の女子に近づいたり、連絡を絶っている鈴香の祖父母との再会シーンを期待したりもしたが、ぶれずに大田と鈴香の物語が軸になっている。先輩夫婦の描写も最小限にとどめてある。

 鈴香の妹も無事に産まれたことだし、ここはぜひ続編を期待したい。