歩いて知る神社と神様(植島啓司)
聖域には2種類ある。神の臨在を感じさせる場所と神に対して祈りをささげる場所だ。前者は見つかりにくい場所にあることが多く、後者は人間側がこしらえたもので人々に良く知られ観光地化している。
神社の始まりから現代の神社まで歴史的な解説も面白い。また中央構造線に沿って著名な神社が並んでいる理由も納得できる。神社や神を知るのは一筋縄ではいかないということがよくわかる。
集中できる子が育つモンテッソーリの紙あそび(百枝義雄、百枝知亜紀)
ハサミを使えるようになった子どもむけの紙遊び案内。作り方と型紙でほとんどのページを占めている。
ハサミはいきなり使えるようにはならない。まずは肩を意図的に動かせるようになり、腕を伸ばせるようになり、グー・パーができるようになり、5本の指を独立して動かせチョキができるようになり、洗濯バサミがつかえるように力加減ができることが条件になる。
ハサミを使えるように練習するのではない。遊びや生活で手をつかううちに、失敗しながら手を使えるようになっていく。できるようにることが楽しくて夢中になっていろいろなことに取り組む。その積み重ねのさきにお箸やハサミがある。
学校教育と家庭教育の違いについてのコラムも考えさせられる。
おもしろサイエンス 地形の科学(西川有司)
たんたんとした表現のせいか、文章が頭に入ってこなかった。
彼女たちが眠る家(原田ひ香)
共通の過去をかかえる女性たちが九州の離島で共同生活を送っている。互いの本名も知らず自給自足に近い生活を続けていた。そこにある母娘が転がり込んできたことから、平穏な日常が崩れていく。
いろいろと考えさせられて面白い。
全てを失った後にたどり着いた場所で暮らすうちにこの最後の砦だけは失いたくないと思い始める。しかし永遠に続くわけもなく簡単に瓦解する。最後の砦を失った女性はどうするのか。命を絶つのは簡単だが、失いたくないという気持ちが芽生えた時点で人生を諦めたわけではない。残りの人生は消化試合ではない。すべてを亡くしたように見えても、また別の場所で生きていくことはできる。立ち直れないほどの悪意を受けても強く美しく生きることができる。
ミステリー仕立てで伏線や面白いトリックもあるが、テントウムシが再起するまでの動きを読みたかった。アゲハにせよ、テントウムシにせよ生きる力はかなりのものである。
日経サイエンス 2019年4月号 走る動物ヒト
・ウルティマ・トゥーレ
形が面白い。いかにも2つの星が合体したような雪だるま型をしてたエッジワース・カイパーベルト天体。
・走る動物ヒト
他の大型霊長類と異なり、ヒトは健康維持のために運動が必要。
・分断の心理学 SNSが加速するタコツボ社会。
ショートカット(便法)、確証バイアス、社会的な目的という3つが中心となって科学的思考を阻んでしまう。人間には合理的な意思決定なしで済まそうとする傾向があり、誰しも手っ取り早い思考法に頼り、既有の考えを強め、自分が属する様々な集団からの圧力に屈する傾向があるということだ。
事実を繰り返し示すだけでは不十分どころか、事実を示す方が逆効果となる。
対処法も考えられ始めているが、分断されることを前提とした対応を考えるほうがよさそう。
・CO2の1兆トン除去は可能か。
不可能です。実行できたとしてもCO2は温暖化の原因の一つにすぎない。
強引に地球の寺フォーミングをするのもいいが、ヒトの数を安定的に減少させていくのが近道と思われる。
また、温暖化は不可避であることを前提として、先手を打つ対応を考えたい。
説明がつかない現象と私が生徒会に入った説明(葵日向子ほか)
10の部活を舞台にした心温まる青春連作ミステリー。花をつけなくなった桜が全作を貫くモチーフになっている。イラストがかわいい。桜の謎はもう少しひねりが欲しかった。生徒会長もキャラがもうすこし立っているとさらに面白かっただろう。