きまぶろ

本とアニメと気ままな生活のブログ

彼女たちが眠る家(原田ひ香)

共通の過去をかかえる女性たちが九州の離島で共同生活を送っている。互いの本名も知らず自給自足に近い生活を続けていた。そこにある母娘が転がり込んできたことから、平穏な日常が崩れていく。

 

いろいろと考えさせられて面白い。

全てを失った後にたどり着いた場所で暮らすうちにこの最後の砦だけは失いたくないと思い始める。しかし永遠に続くわけもなく簡単に瓦解する。最後の砦を失った女性はどうするのか。命を絶つのは簡単だが、失いたくないという気持ちが芽生えた時点で人生を諦めたわけではない。残りの人生は消化試合ではない。すべてを亡くしたように見えても、また別の場所で生きていくことはできる。立ち直れないほどの悪意を受けても強く美しく生きることができる。

ミステリー仕立てで伏線や面白いトリックもあるが、テントウムシが再起するまでの動きを読みたかった。アゲハにせよ、テントウムシにせよ生きる力はかなりのものである。