きまぶろ

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仮面の君に告ぐ(横関大)

 歯科医師の慎介と歯科助手の和沙は結婚を控えていたが、和沙が何者かに殺害される。慎介は生活を投げ打って犯人捜しをする。一年後、事故で寝たきりの千鶴の体に憑依した和紗が目を覚ます。戸惑いながらも和沙は慎介に近づいていき、自分の腕時計の日付が憑依の残り日数であると知る。病院で目を覚ましてから十日間のタイムリミット。意外な真相の前に和沙のとった行動は。

 

 以下ネタバレあり。

 行動力のある和沙もいいが、トイプードルのソラと弟の潤君がいい役を演じている。タイトルの「君」は慎介のことだった。物憂げに問いかけるような表情の女性は和沙から慎介に向けたものであろう。見返しで涙を流す和沙は結末を暗示している。

 慎介のデスペレートな動機が知りたかったが、そこに触れてしまうのを避けたのだろう。そつがなく人当たりが良い性格で慎介を描写しているが、そこかしこに違和感を与える描写があり、もしかしたらという感じではあった。他人には興味がなく、食べ物を餌とも捉え、診察待ちの患者がいる前で先に帰り、女性の胸の大きさを気にしていた。

 結末はあのような形になったが、別のパターンを想像してみると面白い。もし慎介が罪を告白していたらどうなるのか。もし、腕時計を壊したらどうなるのか。森千鶴と潤の物語もスピンオフで読んでみたい。ドラマ化もできそうな内容だ。