きまぶろ

本とアニメと気ままな生活のブログ

ラブ・ケミストリー(喜多喜久)

 本郷の大学の農学部修士として通う桂一郎は、複雑な構造式の有機化合物でも全合成経路がひらめくという能力を持つ。だが、研究室に配属された事務員に一目ぼれをすると能力が失われてしまう。余命の短い彼女はそれを知り強い未練を持つところに死神が現れる。そして桂一郎は恋と化学の選択を迫られる。

 

 桂一郎の能力を取り戻すように死神に依頼する「彼女」はいったい誰なのかという謎解きのミステリー。人の死なない推理小説とも言える。死神のスタイルが他の作家の作品と似すぎていると感じた。

 東大農学部の描写がリアルである。本郷の東大と言えば赤門、安田講堂などをイメージする。工学部7号館の裏から歩道橋で結ばれているとはいえ、農学部言問通りをはさんで隔離されており、足を踏み入れた人は多くはないだろう。