きまぶろ

本とアニメと気ままな生活のブログ

フィクション

探偵AIのリアル・ディープラーニング(早坂吝)

人工知能を研究していた教授が密室で殺害され、教授が作った2つのAIのうち1つが犯罪グループに盗まれた。敵対的生成ネットワークとして自律的に学習するAIで、犯人役、刑事役の2つのAIのうち犯人役だ。犯行グループはこのAIが考案したアイデアの通りに人…

神様を待っている(畑野智美)

26歳の愛は大学卒業後の就職に失敗し、派遣先からも切られ、家族とは没交渉、家賃も払えずマンガ喫茶暮らし。ついには出会い喫茶に身を置くことになってしまう。このまま落ちるところまで落ちるのか。それとも神様が救ってくれるのか。 引き込まれて一気読み…

珈琲店タレーランの事件簿(岡崎琢磨)

京都のコーヒー店を舞台にしたグルメミステリー連作集。バリスタを務める魅力的で聡明な美里がホームズ役。日常の謎を解きながら、「僕」と美里は距離を縮めていき、四年前に負った美里の心の傷も少しずつ癒していく。著者らしく言葉遊びも豊富だし、叙述ト…

ガリバー旅行記(スウィフト)

アイルランドの風刺作家ジョナサン・スウィフトによって約300年前に書かれた旅行記。想像上の国を行き来することで、人間社会とくにイギリス社会を批判している。極端な意見も多いが、政治学の入門書にもなっている。糞尿への嗜好や親子関係、女性に対する諦…

ライト・ノベル(滝本竜彦)

ふみひろは担任に部室の鍵を渡され、新しい部活を作り部員を集めるように言われる。部室には異世界と通じるゲートがあり、部室での記憶は部屋を出ると忘れるという。ふみひろとテレパシーを交わせる幼馴染のみなみが探索者としてゲートの奥に消える。ゲート…

境内ではお静かに(天祢涼)

大学を中退し自分探し中の壮馬は兄夫婦が神職を務める神社で働くことになり、神社に住み込むアイドルのようにかわいい雫が壮馬の教育係となった。雫のふだんの冷たい表情と参拝者に対する笑顔のギャップもさることながら、謎を解決する能力も一味違っていた。…

5分後に癒されるラスト(エブリスタ)

小説投稿サイトからのピックアップシリーズ。癒されるかどうかは置いて、「日々、ご飯」がリズミカルで良かった。「to beサンタクロース」も「飛べ」と読めるし、「静かで優しい夜のこと」もほっこりした。

夏の裁断(島本理生)

立食パーティで小説家の千紘が編集者の柴田の手をフォークで突き刺す。柴田に翻弄され支配され続けたことが原因だった。千紘は仕事を離れ祖父の残した鎌倉の古民家に越し、一人で祖父の蔵書を裁断し自炊する生活を始める。鎌倉でいろいろな男を知り、足元が…

体育館の殺人(青崎有吾)

密室状態の体育館の舞台には緞帳が下ろされ、その裏で男子生徒が刺殺されていた。警察はあてにならない。学校に住み着いているアニメオタクは最初は渋っていたものの、解決に乗り出す。正義感でも好奇心でもなく、報酬の15万円でアニメグッズを買うために。 …

5分後に皮肉などんでん返し(エブリスタ)

小説投稿サイトに投稿された作品から選び抜いた「5分後シリーズ」の一つ。 プロ作家のアンソロジーではないし、玉石混交だが、意外と楽しめる。 「わがままおうさまのしょくたく」「アイの黒」「死に至る病」「始まりと終わりのきっかけ」が面白かった。

ガラスの殺意(秋吉理香子)

「できるだけのことを、できるときにやってあげるだけでいい。できないことをやらないのは、悪くもないし間違ってもいない。自分を責めたり罪悪感に押しつぶされるのは、全く無意味だと思います。」 19年前に通り魔から逃げ、道路に飛び出したときに車に轢か…

5分後に意外な結末ex バラ色の、トゲのある人生

欧米の小咄の翻案や有名作家の掌編33を集めたもの。角ゴシックだったり、アラビア数字を使っていたりに最初は慣れなかった。 「見送る背中」「消したい記憶」「ブランコ」「神様の特権」「おじいさんの花束」「1枚の肖像画」が特に良かった。

いなくなれ、群青(河野裕)

誰かに捨てられ、記憶をなくした人が集まる階段島。階段島にいる人々は一癖も二癖もあるが、皆何かを諦めたように暮らしていた。魔女が支配するこの階段島からもとの世界に戻るには本人が失ったものを見つける必要がある。階段島の人々は前の世界でのつなが…

だから見るなといったのに

ホラー・アンソロジー とわの家の女、自分霊、高速怪談が特に面白かった ・あまりりす(恩田陸) ・妄言(芦沢央):妄言は予知 ・破落戸の話(海猫沢めろん):「ごろつき」とは読めなかった ・とわの家の女(織守きょうや):芸者と身体を重ねると死ぬ ・…

世界の終わりと始まりの不完全な処遇(織守きょうや)

「好きな人がそこにいて、好きだと伝えることができる、この状況がすでに奇跡的」 オカルト研に所属する大学生の主人公と吸血種少女のラブコメサスペンス。死人は出ているがそれほどの緊張感はない。連続殺人犯の正体は意外だった。友情よりも犯人逮捕よりも…

SFショートストーリー 傑作セレクション 時間編

小学校高学年から大学生を対象としているが大人が読んでも楽しめる。昭和後半に発表された時間をからめたSF短編6つ。 御先祖様万歳(小松左京):山の洞窟が100年前と繋がったら。 時越半四郎(筒井康隆):時間と空間を跳躍して生まれた子 人の心はタイムマ…

臨床真理(柚木裕子)

「私にしか、彼を救えないから」 臨床心理士として美帆が初めてカウンセリングを担当した藤木青年は同じ施設で自殺したとされる少女が実は他殺だったと訴えてきた。精神を病み若くしてこの世を去った弟と藤木を重ね、美帆は施設で起きた忌まわしい事件に迫ろ…

ぼっちーズ(入間人間)

「創造の基本は破壊だ」 ぼっち生活を送る大学生たちのお話。ぼっち上級者とは言えないが作者の語り口が相変わらず面白い。タイトルのぼっちーズは「墓地s」か。

ウィステリアと三人の女たち(川上未映子)

4つの短編集 さすが芥川賞作家という思い、それにしては面白いと感じる。 彼女と彼女の記憶について:「記憶の箱」が届けられる シャンデリア:使い切れないほどの大金を手にして マリーの愛の証明:見えなくても見えてもあるものはある。 ウィステリアと三…

消えていく日に(加藤千恵)

「選べなかった道の方が光輝いて見える。どうしても」 二十代から三十代の迷い悩む女性の九つの短編集。語られている女性たちが落ち着き冷めているせいか、起伏が小さく落ち着いている。平易な表現で語られ、構えて読む必要もなく力を抜いて読める。転機を迎…

連続殺人鬼カエル男(中山七里)

「人が人を殺める理由は煎じ詰めれば三つ。愛憎、カネ、狂気だ」 口にフックをかけられマンションの13階かた吊るされた全裸の女性死体にはひらがなだけの稚拙な文字で犯行声明文も残されていた。間を置かずに第二、第三の猟奇殺人がつづく。 二重、三重にめ…

海と月の喫茶店(櫻いいよ)

「うまくなりたいなら手段なんか選んでるんじゃねえよ」 海のある町から奈良へ転居してからは居場所もなくぼっちになってしまった高校生の香月は、隣の立海くんのノートにスイーツレシピが連ねてあるのを見てしまう。彼は夜だけ開く喫茶店で働いていた。不器…

さしすせその女たち(椰月美智子)

「さすが、知らなかった、すごい、センスある、そうだったんだ」 魔法の言葉も時と場合による。 「あいうえおかの夫」はなくてもいい。

ヴェネツィア便り(北村薫)

いろいろなジャンルの小品集。第三章の「開く」「岡本さん」「ほたるぶくろ」が良かった。

ビューティフル・ネーム(北森ちえ)

いつも教室のすみっこでひとりぼっちの中1の桃子は夏休みに近くの大学でのサイエンスプロジェクトに参加し、ラットの実験を手伝うことになった。実験での出会いを通じて人を幸せにする仕事をしたいと思うようになる。

800年後に会いにいく(河合莞爾)

タイムトラベルもの。冒頭のメイがvirtualなものという予感があった。文系ではないからわからないが、恋した少女がvirtualと知ったら動揺しそうなものだ。薬缶と言えば、火にかけたのを忘れて薬缶をまっ黒にしてしまったことがある。それも2回も。もったい…

燃える波(村山由佳)

「人は過去によって形作られる生き物だ。それぞれの歴史があってこそ、今ここにいる」 ライフ・スタイリストとして活動する帆奈美は42歳。ラジオのパーソナリティもこなし、悩み相談のコーナーがある。仕事は充実しているが夫との関係は冷めきっている。大女…

ラブ・ケミストリー(喜多喜久)

本郷の大学の農学部で修士として通う桂一郎は、複雑な構造式の有機化合物でも全合成経路がひらめくという能力を持つ。だが、研究室に配属された事務員に一目ぼれをすると能力が失われてしまう。余命の短い彼女はそれを知り強い未練を持つところに死神が現れ…

編集ガール(五十嵐貴久)

出版社の経理部で働く27歳の久美子は、ワンマン社長の命令で社運を賭けた新雑誌の編集長へ抜擢される。畑違いで右も左もわからず、社内恋愛中の彼を頼りにするが・・・。 楽しく読めるお仕事小説。後半は不自然なほどとんとん拍子に進みすぎる。ラストも以外…

世界の終わりの庭で(入間人間)

黄昏の惑星+ラブコメという作者得意のジャンル。2度読みしたくなる。というか、2度読みすると話がつながる。まさか角がアレだとは思わなかった。