きまぶろ

本とアニメと気ままな生活のブログ

フィクション

ずっとあなたが好きでした(歌野晶午)

13の恋愛ミステリー短編集。伏線もしっかりで、トリックが面白い。二度読み、三度読みは当たり前?

杏奈は春待岬に(梶尾真治)

タイムトラベルもの。回収されていない伏線もあり、サイドストーリーが気になる。特に梓関連。ペアの一方だけ不老という話も他で読んだが、どう転んでもせつない。

白のショートショート(山口タオ)

同時刊行の「黒のショートショート」と対になる本。星新一以外のショートショートで面白いと思ったのは久しぶり。

午前零時のサンドリヨン(相沢沙呼)

「不思議は不思議のまま楽しんだ方がいい」 心を揺さぶるラブコメミステリー。最近購入した本の中では一番。 酉乃初→とりのはつ→とりのニュー→ニュートリノと連想した。他の素粒子とはほとんど相互作用することのない素粒子である。

わたしのグランパ(筒井康隆)

十五年のお勤めを終えて刑務所から祖父が戻って来た。侠気あふれるグランパは街の人から慕われ、問題を次々に解決していく。「死ぬ気になれば何でもできる」と立ち回るが、最期はあっけない。世の中はきれいごとだけではない。

短編工場

2000年代に小説すばるに掲載された短編作品から厳選された12編。 ・かみさまの娘(桜木紫乃)人はそのときどきに見たいものしか見えない。 ・チヨ子(宮部みゆき)着ぐるみをかぶると、人の姿がその人の大切にしてきたアイテムに変化する。 ・約束(村山由佳…

生まれる森(島本理生)

私はあの人に幸せになってもらいたかった。眠る前に新しい朝が来ることを楽しみに思うような、そんなふうになってもらいたかった。

天体の回転について(小林泰三)

SF短編集。小林泰三というとホラーのイメージだが、SFも面白い。少しホラーというかグロのテイストも混じっている。 天体の回転について:月にも軌道エレベーター 灰色の車輪:ロボット工学三原則の隙間 あの日:無重力世界での物理トリック 性交体験者:セ…

後悔病棟(垣谷美雨)

空気の読めない女医のルミ子は患者や家族の気持ちが分からず、スタッフからも白い目で見られていたが、ある日花壇のなかで見つけた聴診器を使うと、患者の心の中の声が聴こえた。しかも、心の中で過去をやり直せるという効果もあった。死を前にして後悔して…

里山奇談(coco、日高トモキチ、玉川数)

人の暮らす地と神の住む山の境にある里山にすむ不思議な話。動植物、昆虫、怪異など40編。

セピア色の凄惨(小林泰三)

「親友のレイを探してほしい」と探偵事務所を訪れた彼女。このままでは親友が消えてしまう。古ぼけた4枚の写真から始まる4つの連作。 親友の名前からして、何となくあれかなと予想できる。 待つ女:何十年も待つ女性 ものぐさ:怠惰な女性の行きつく先 安…

シルエット(島本理生)

青春は決して明るくない。だからこそ、ごくわずかな綺麗なものとか、しあわせなものをなんとかして探して、乗り切っていくものなのかもしれない。 著者が中高生時代に文芸誌に乗せた作品。

みきわめ検定(椰月美智子)

「枝付き干し葡萄とワイングラス」と同時刊行の短編集で、結婚していない女性を中心に11編の短編・超短編を集めてある。こちらでも一人称が「彼女」となっているものが多い。表紙では超短編を含む短編集とあるが、短編を含む超短編集である。レイモンド・カ…

最初の質問(長田弘・いせひでこ)

「今日、あなたは空を見上げましたか。 空は遠かったですか、近かったですか」 まるで詩のような文だと思ったら詩だった。一つの例外を除き最後の最後まで疑問文が続く。児童書ではあるが、大人にこそ読んでもらいたい。身の回りのものを見つめ言葉にするこ…

少女(湊かなえ)

自殺を考えたことがある少女の親友は、身近な人の死を見たがる少女。死とはいったい何なのかを是非とも知りたがる。そこに、親友の自殺を見たという転校生が運命のようにやってくる。 何となくおっさんの冤罪を暴いてちゃんちゃんみたいな結末が読めた気がし…

鏡じかけの夢(秋吉理香子)

磨きながら願い事をすると望みが叶うという鏡についての連作。二人の人間が矛盾する願いをしたらどうなるのか。また、代償はないのだろうか。5つの物語で、それぞれ2人ずつが願いを込める。すんなり叶えられるはずもなく、思いがけない悲惨な状態で叶うも…

さやかちゃん(くすのきしげのり・こばようこ)

小2のしゅうとは、徳島からの転校生のさやかちゃんに一目ぼれ。さやかちゃんを前にするとまごまごして思うようにしゃべれない。ちょっとしたことから、さやかちゃんを泣かせてしまったりもするが、家族に相談しさやかちゃんに手紙を書くことにする。しゅう…

十年交差点(中田永一、白河三兎、岡崎琢磨、原田ひ香、畠中恵)

「十年」をテーマにしたアンソロジー。yomyomの2016春、夏、冬号に初出したものをまとめた文庫。それぞれの作家らしさが出ている。原田ひ香の作品を読んだのはこれが初めて。 地球に磔にされた男: 時間跳躍は10年前にいったん飛び、間を開けずに再び10年後…

枝付き干し葡萄とワイングラス(椰月美智子)

短編集 結婚した女性の目から見た日常で、特にドラマがあるわけでもない。主人公を「彼女」と呼び、三人称の客観的な視点からの描写している。 城址公園にて:切り出された離婚話を保留し、親戚の子らと向かった公園。 風邪:夫がスノボ休暇で不在のときに、…

彼女がエスパーだったころ(宮内悠介)

SF寄りのミステリー連作。 事件や事故、殺人も起きるが、謎解きをして犯人捜しをすることを迫られるようなものではなく、時間を置いて振り返ったり、主人公が取材したりしたことから真相がわかるようになる。 内容とは関連がないが、本書は日焼けに弱い紙を…

はじめましてを3000回(喜多喜久)

「くだん」という単語をご存知だろうか。漢字だと、「件」と書く。 国語辞典を見ると、「前に述べたこと」とか「例のこと」とか、そういう用法が出てくる。「くだんのことで相談がある」といった具合に使われる。 でも、俺が言いたいのはそっちじゃない。 「…

あなたの呼吸が止まるまで(島本理生)

舞踏家の父と二人で暮らす小6の朔の夢は小説家になること。父は仕事でほとんど家に帰らないし、担任の教師も朔を理解せず、身近に頼れる大人がいない。クラスでは気の強い鹿山さん、優しい田島君と友情を深めるが、近づいたり離れたりを繰り返す。そして、…

エンディングドレス(蛭田亜紗子)

最愛の夫に先立たれた麻緒はまだ三十代だが、夫の後を追うことに決め身辺整理を始めた。首吊り用のロープを買った帰りに「終末の洋裁教室」のチラシが目に入る。洋裁教室に通う中で生きようとする気持ちが芽生え始めていく。 生きる力をどのようにして手に入…

ふがいない僕は空を見た(窪美澄)

年上の主婦とコスプレセックスを重ねる高校生の斉藤。姑に不妊治療を強制される女性。やっかいなものを何とか乗り越えようとするのではく、抱えたまま生きていく物語。お金とセックスは生きていくのに必要で避けて通れない。「ミクマリ」を含む5つの連作。R…

みなさんの爆弾(朝比奈あすか)

独特の暮らし方をしている6人の女性作家の短編集。モヤモヤとした物語、奇妙で不思議な物語、脚色の加わった物語、希望の物語といろいろ楽しめる。気になったのは「メアリーとセッツ」と「戦うなと彼らは言った」 「メアリーとセッツ」は読み直してみたけど…

家の中で迷子(坂口恭平)

夢の中の世界。いつ目覚めるのかと思っていると読みながら寝てしまった。翌日、トツマツって誰だろうと思いつつ先を進めるも5節までで再び撃沈。無事に書斎へ差し戻すことになった。

未来製作所(松崎有理ほか)

「新しい移動」をテーマにしたショートショートアンソロジー。ショートショートらしいオチもあるし、人情もあって楽しめる。未来の移動に思いをはせるとAIや自動運転が思い浮かぶがそれだけではない。新しいアイディアで移動が楽しくなると良い。「山へ帰る…

アライバル(ショーン・タン)

字のない絵本。ディストピアから逃れ、移民として住み始めた街では言葉も通じず、奇妙な生物が暮らし、見たこともない道具ばかり。それでも生きていくためには仕事をし食べていかねばならない。無声映画のセピア色の映像が流れていくようだ。

えとえとがっせん(石黒亜矢子)

十二支の干支がお互いに戦うのではなく、十二支対その他の動物という図式のバトル物。特に十二支サイドが鳥獣戯画を思い起こさせる。シュールで楽しい一冊。ただ、主人公のタヌキ君の必殺技は自身にもダメージがありそう。

キリの美容室(上野歩)

「本来の自分に変身する」 小学生のときに家を出て行った理容師の母に復讐しようと、自身も理容師になったキリは理容師として自信が持てなかった。シェービングはうまくいっても、肝心のカットが決まらない。だが、キリは持ち前の行動力を活かし、母と向き合…